星読みのお守り2


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 2週間ばかり、温室ドームは苗床ブロックの搬出に毎日大わらわだった。
 第8惑星の影で情報を拾っていたキジローがドームに戻ってくると、50台くらいのガードナー・ロボットがキューキュー大騒ぎしていた。
「この鳴き声は、本当に必要だったのか?」とキジローが聞いた。
「急に数が増えたので、無言で後ろにたまっていられると不気味だ、と文句言われたんだよ」とジンが説明した。
「文句って誰にだ?」
「セバスチャンとゲオルグ」
「あいつら、全部つながってるんじゃなかったのか?」
「つながってるんだが、こいつらは多すぎるので間にステーションを設けたんだよ。それで伝達が0.03秒くらい遅れるんでイラつくらしい」
「イラつくだって?このドラム缶が?生意気な」
 キジローはため息をついた。
「あの2人は?」
「あいつらは裏手のラボのフリーザーにいる。苗床ブロックを泉のドームに移すんで」
「じゃ、そっちを手伝ってくるかな」

 ラボに向かうと、途中の5層のエア・カーテンが無くなっていた。
「おい、あれ、いいのか?開けっ放しだぞ」
「ええ、大丈夫」サクヤが説明した。「この生物はみんな、おおむねイドラの病原体の抗体を持っていることがわかったの。つまり、彼らがここに来るのは初めてではないし、イドラの生物もしょっちゅうペトリに行ってたということよ」
「お、手が2本増えた。キジロー、こっち代わってよ」とエクルーが防寒着をばふっと投げて寄こした。
「フランツがてんてこまってるから、苗床ドームの方を手伝ってくるよ」
「フランツって何だっけ?」
「リストのファースト・ネーム」
「そうじゃなくて、だな」
「ガードナー・ロボットのステーションだ。彼が情報をまとめてセバスチャンに送るわけ」
「なるほどね」
「じゃ、よろしく。ひゅ〜、冷えたあ」
 エクルーがフリーザーから出て行った。

「あんたは寒くないのか?」
「私は平気。もともと体温低いし」サクヤはリストから目を放さずに答える。
「いくら低くても、−20℃は堪えるだろう」
「大丈夫。リング付け手伝って。ブロックの角にナンバータグがついてるから、リストで行き先のドームを調べてコードリングをつけて行って」
 しばらく2人は黙って作業をしていたが、やがてキジローが言った。
「リストの見方は大体覚えたから、あんた、ちょっと外で休んでこいよ」
「平気。今日、搬出する分、やっつけちゃいましょう」
「あー、もう、くそっ」
 キジローはつかつかとサクヤの方に歩いていくと、リストを取り上げた。そして腕をつかんで、フリーザーから連れ出した。
「ちょっと、キジロー」
「いいから」
 温室まで来て、やっとキジローは腕を離した。
「最低30分はここにいろ。今、何か温かい飲み物を持ってくる」
「でも、まだ・・・」
「くちびるが紫色なんだよ。そんな幽霊みたいな顔で、何が平気、だ。日向に座ってろ、いいな?」
そう、大きな声で言って、キジローはキッチンへ向かった。