星読みのお守り


 ゴツゴツした星が空いっぱいに迫って来て、地面を鳴動させる夢を見た。
 キジローは心配になって、温室にサクヤを探しに行った。

 ドームの1番天井の高いところに、木製の3階建てのデッキがある。各階に帆布のタープが張ってあって、ハンモック代わりになっている。デッキの1階のタープにサクヤの姿を見つけて近寄ると、サクヤの側らでエクルーが身体を起した。
 キジローはくるっと回れ右をして、温室から出て行こうとした。エクルーはひらりと跳んで、キジローの前に着地した。

「ちょっと待て。何かゴカイしてるだろ?」
「ゴカイ?いや・・・スマン。俺はてっきり、あんたらはできてないもんだと・・・」
「できてないよ」
「え?」
 タープの上でサクヤが寝返りを打った。
「ハンガーに行こう。サクヤはさっきやっと寝付いたところなんだ。もう朝だな。コーヒーでも飲む?」
「ああ」
 ハンガーのステップに腰掛けて、2人でコーヒーをすすった。
「あんたを誤解させとくのは簡単だけど、フェアに行くって決めたんだ。サクヤはまだ選んでないからね」
「そうなのか?しかし・・・」
「できてない。そう言ったろ?俺は夢を散らしてるだけだ。サクヤは俺が横にいることに気づいてない。そう暗示をかけてある。気づけば、さらに不安を隠して1人でしょうこもうとするからな、サクヤは」
「でもそれじゃあ、お前が不利じゃないか。ちっともフェアじゃない」
「いいんだよ。ちょっとでもサクヤの”星読み”の負担を肩代わりできれば」
 エクルーは3段上のステップに座っているキジローを見上げて、ニッと笑った。
「あんたが来てから、俺の荷は半分になった。ずい分助かっているんだぜ?」
 エクルーは右手を差し出した。
「俺たちはまだイーブンだ。仲良くやろう」
「あ・・・ああ」
 キジローは釈然としないながらも、右手を出してエクルーと握手した。