コント「トラの穴2」


 筋肉痛がひどいので午後のトレーニングを休むことにして、キジローとエクルーはジンのドームに行った。
「キジローはコンピューター強い方?」
「使ってはいるけどな。ヴォイス・ナビゲーションのあるフレンドリーなやつだけだ。けんつくしてるヤツのプロテクトを解いて、データを盗み出すようなマネはムリだな」
「じゃ、そっちも特訓だな」
「俺がやるのか?」
「だってテレポートとPK駆使して、あっちの能力者とどつき合いする方がいい?」

 1週間毎日午前中ジンにしぼられて、とうとうキジローが音を上げた。
「毎日何百と例題作ってにこにこしながら待ってるんだぜ?まったくサドだよ、あのジンってヤツは。悪いがムリだ。とても頭に入らん」
「・・・仕方ないな。じゃ、プランBで行くか」
「プランBだと?」
「ジンに一緒に来てもらって、ヴォイス・ナヴィの代わりをやってもらう」
「だって、あいつはドシロートだろう?ガードしながら敵さんの船に連れて行くなんて絶対ムリだ」
 エクルーがにっと笑った。
「だからジンの眼と声だけ連れて行くんだ。ゴーグルに細工して」
 キジローはあんぐりと口を開けた。
「最初からそうしてりゃ、俺は1週間も呪文に悩まされなくてすんだじゃないか!」
「そういうわけにいかないさ。内容を理解してなきゃ、指示に従えないからね」
「ということは・・・」
 エクルーがにこにこしながら、キジローの肩を叩いた。
「そう。特訓は続くよ?ただ丸覚えしなくてすんだだけ」

 そこへジンが妙もかさばったゴーグルを持って入って来た。
「試作品だから見てくれは悪いが、最終的には5gで作るよ」
「何だか俺、ジンとおまえのいいオモチャにされてる気がするぜ」
「失礼な。俺たちだって真剣だぜ。なあ?」
「そうそう。マジも大マジ」
ジンがにかっと笑った。