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 沈黙が流れた。キジローは何とか情報を整理して、活路を見出そうとしていた。キリコを取り戻す道を。

「それで、あんたのいとこは?」
「彼女も生まれつき強い能力者で、自分の娘を理解したくて父親はテレパシストの脳生理学や精神科学を研究し始めた。それを買われてアカデミーに雇われたんだ。彼は、最初プロジェクトの全貌を明かされてなかった。娘のことは注意深く隠していたのに、むりやり実験体にされそうになって、2人で逃げた。父親は追っ手に殺された。いとこは・・・彼女は、今のところ安全なところに避難している。でも、アカデミーの目がある限り、普通の生活は望めない」
「じゃあ、今日、お前がターミナルにいたのは・・・?」
「プロジェクトの情報を拾いたかったんだ。アカデミーは足がつかないように、小さなステーションを丸ごとラボや被験体の訓練施設にしてる。いつも移動していて、実態が掴めない」
「何か収穫あったか?」
「ゼロだ。ああ、でも、今日あんたに会ったのは収穫だったかもな。俺たち、仲間を探してたんだ」
「仲間」
「一緒にアカデミーのプロジェクトを潰して、さらわれた子供を取り戻す仲間」
「お前の他に誰がいる」
「俺、俺の姉、後7人」
「あんたの姉は、まあ、そのいとこと因縁があるとして、その残りの7人は、なぜ関わっているんだ?」
「増幅装置に使われた石のもともとの持ち主なんだ。盗まれたんだ」
「石を取り戻したいってわけだ」
「というより、自分たちの石が悪用されて子供が虐待されていることに、責任を感じている。そして危機感だ。盗まれた石はごく一部なんだ。もし、彼らの石がすべてアカデミーの手に渡ったら?空母どころじゃない。星ひとつ砕けるパワーがある」
 キジローはちょっと乾いた笑いをもらした。
「まさか・・・星ひとつなんて、いくら何でも大げさだろう?」

 エクルーは固い表情で首を振った。
「7年前の、客船クイーン・マリー号の事件を覚えているか?」
「ああ、たまたま同盟の将軍が3人ばかり乗り合わせたばっかりに、植民星団から声明が出た。すでに照準は貴艦にあわせてある。抑留中の活動家5人を解放せよ。迎撃しようと、ねらっているという衛星や空母、戦艦を必死で探したが、星域に星団の船などなかった。時間切れで、船は爆破された。2000人の民間人もろとも」
「そう、その船を壊したのが、さっき言った俺の友人だ。当時、9歳かそこらだった。たったひとりの子供が、指をパチンと鳴らすだけで、大型船が吹っ飛んだんだ。彼の腕に埋め込まれていた石は、たった500mg。7人が保有している量は1tや2tじゃきかない」