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 キジローの小型船「タケミナカタ」に乗り込んで、ステーションのポッドから切り離した。
「とりあえず、サンタンジェロ・コロニーまで自動運転にした。ここは完全に密室だ。さあ、話してくれ」
 エクルーはざっとスキャンした。
「うん、虫もついてない。クリーンだ。注意深いんだな、キジロー」
 ターバンにひっかけていた丸いサングラスを手に取ると、エクルーはキジローの目の前に突き出した。
「フェアじゃないから、最初に言っとく。俺はこういう種類の人間なんだ」
 サングラスがふわっと浮き上がった。それを追うようにエクルーの身体も宙を舞って、くるっと回転すると姿が消えた。
「こっち、こっち」と天井から声がして、ぶら下がっていたダクトから一回転してスタンと床に下りた。

「エスパーってヤツか?」
「ああ、昔、そういう呼び方したねえ。でも俺の場合、特殊能力じゃなくて、星の人間が多少の差はあれ、みんなこんな風だった。ちょっとばかし身軽で、目と耳が利くだけだ」
「どこの星だ?」
「もうない星だよ」
「ふん、それで俺の名前も、キリコのことも盗み読みしたってわけだな。それで?お前さんの友人といとこってのは、どうアカデミーと関係があるんだ?」
 彼が、冷静に事実を受け入れているのが、有り難かった。
 テレポートを見せた時点でパニックを起されても仕方ないのだ。しかし、どういうわけか、この男には全部話しても大丈夫、という確信があった。

「アカデミーは能力者を集めている。サイキックの増幅装置を開発したからだ。素質のある子供をさらっては、実験を繰り返している」
「何のために?」
「ビームもミサイルも無しに空母を破壊できる人間が100人手に入ったら、あんたならどうすると思う?」
「軍の特殊部隊、それも最強のヤツが作れる」
「そういうことだ。・・・友人は、思考コントロールを受けて、テロ活動をさせられてた。罪悪感の負荷で、自我が破壊された。増幅装置をむしり取った途端、記憶も消えてしまった」
「今、そいつは?」
「施設にいる。何とか彼だけはアカデミーから脱出させた。でも、他に被験体はたくさんいて、研究が進んでいる」
「その増幅装置って何だ?」
「石さ。白い化石だ」

 キジローはどさっとシートにへたり込んで頭を抱えた。
「キリコも・・・?その実験のためにさらわれたっていうのか?だが、キリコは普通の子供だぞ。能力者なんかじゃない」
「資質があったんだと思う。だって、あんたも直観力と感応力が強い」
「俺が・・・?俺は・・・!」
「さっき、俺の思考に振り向いたじゃないか」
 キジローは愕然としてしまった。
「俺のせいなのか・・・?」
「ちがうよ、たまたまそういう血筋だっただけだよ。先祖や親戚にそういう人いただろう?」
「ああ、だからあまり特別なことだと思ってなかった・・・」