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 天窓から星の光が射すようになっても、二人は静かに横たわっていた。エクルーは顔を寄せると、サクヤの耳元にひとこと囁いた。サクヤは驚いて、向き直った。
「そんなこと・・・できるのかしら?」
「船には一緒に行くだろう?俺の光をサクヤが回収してくれればいい。だから約束して。今度の大崩壊も生き延びて。それが、俺を生かすことになる。君はひとりにはならない」
「また会える?」
「また会える。信じる?」
「信じるわ。約束する。きっと今度も生き延びるわ」

 エクルーは上体を起して、サクヤの顔をのぞき込んだ。
「キスしていい?」
「もうしてるじゃない」
「うん・・・・でも、いい?」
「いいわよ。けど・・・」
「けど、何?」
「瞳を見せて」
 サクヤは両手でエクルーの顔を包んで、瞳をのぞき込んだ。
「この明るい色。この瞳が私の初めて見た光だった。母の夢の中では、何もかも冷たい、無彩色の世界だったから」
 初めて自分から引き寄せて、サクヤはエクルーにそっとキスをした。
「この光について行こうと思ったのよ。私のポーラー・スターだわ」
 エクルーは、サクヤの肩に顔を埋めてうめくように言った。
「どうして今頃になって、そんな事言うかな」
「言ってなかったかしら」
「聞いてないよ。俺だってね。初めて塔の地下に忍び込んで眠っているサーリャを見て以来、もう・・・捕まっちゃったんだからね。士族の責任も、星読みとの確執も、地球に行ったらどんな生活が待っているかとか、全部吹っ飛んじゃって、ここまで一緒に来ちゃったんだからね」
「あら、まあ、じゃあ・・・私達、両思いじゃないの」
「頼むから、そんなのん気な声で、他人事のように言わないでくれよ」
「あら、これでも十分、感動してるんだけど」
 その緊張感のない声にエクルーはがっくりして、身体を支える腕まで脱力してしまった。
「重い、重い。つぶれちゃうわ」


 朝日の射す石段を上がりながら、時々エクルーが振り返った。
「もう怖くない?」
「ええ」
 朝日に髪が透けて、瞳も一段と明るく見えて、今にも光の中に溶けてしまいそうだった。眩しい。
「また会えるってわかったから」
「え、何か言った?」
「ううん」